今日は中国武術の練習体系についてお話します。中国北方に広範囲に広まっている長拳系列の武術について代表的なものとしてとらえて頂ければ幸いです。
中国武術の練習体系
中国武術は以下の順序で行われることが一般的です。
暖身(ウォーミングアップ)
中国武術では、まず練習を始める前に十分な時間をとってウォーミングアップを行います。一般的にこれは号令をかけて全員で行うのではなく、各位がそれぞれ行います。
初級者が含まれている場合は、師兄が号令掛けを行い練習する場合もありますが、中級以上ばかりが集まり、要領を得ているメンバーばかりの場合はウォーミングアップは各自の裁量にゆだねられます。
練習生の状態は100人いれば100人異なります。同じ人間でも体調により体が重い日、よくほぐれている日があり、千差万別です。それぞれのタイミング、それぞれの負荷に合わせてウォーミングアップを行うことが、長期的な利得を増大させることを中国人はよく知っています。
たっぷり時間をかけて行いましょう。
站步
その次に、立ち方の練習を行います。站步、系統によっては架式などと言われます。弓歩、馬歩、虚歩、仆歩、坐盤、独立式は、門派が違えど似たり寄ったりです。細かい要求には門派独自の要訣が加わることがあります。
四六歩、七星歩、三体式、麒麟歩など門派特有の立ち方、名称もありますがこれらはもとを元を正すと馬歩や弓歩、虚歩などの基本歩形の派生型です。中国武術は「立つ」ことを非常に重視します。不安定な動作、取っ組み合いでもぶれないように、また、剛猛な打撃を行っても体をしっかり支えられるように、中国武術の練習では低い姿勢で立ち方を徹底的に訓練します。
下半身の練習は徹底的に行います。
踢腿
正踢腿、斜踢腿、側踢腿、擺蓮腿、裡合腿、踹腿、彈腿、掃腿、二起腿、旋風脚はどの北派門派でも基本功として練習します。蹴り技が少ないとされる拳種も、根幹技術は所謂長拳から派生しているので基本功は同じです。
足技が苦手な方が蹴り技が少ない拳種を専攻しても、これらの基本功から逃れることはできません。拳を練ることは、腿法を練ることを意味します(練拳就是練腿)。
練拳術就是練腿法(拳術を練ることはそれつまり腿法を練ることである)
單招
単発動作の練習です。例えばボクシングでいうところの、ジャブ、ストレート、ワンツー、このような練習です。これも数をこなすことにより基本動作を体に叩き込んでいきます。短い組み合わせでコンビネーションの練習をすることもあります。例:一歩三捶 崩捶閉門脚 馬歩捶等
動きが体に馴染むまで数量をこなしましょう。
套路
空手では「型」が套路に当てはまります。いわゆる「振り付け」を学びます。これは単発動作を組み合わせて、音楽でいう曲のように仕立て上げたものです。中国北派武術では、直線状を往復し、最後は開始位置に戻り、練習しやすく組み立てられていることが多いですが、例外も多数あります。門派の基本的な過敵技術、風格を学びます。
門派独特の風格、攻防技巧の考え方を学びます。
兵器
中国北方の四大兵器、棍、刀、剣、槍、その他独特の兵器を学びます。中国武術の身体操法は、兵器での戦闘技術を前身としているため、近代以後に整理された一部の拳種を除き、兵器と拳術はシームレスに繋がっており、切り離すことはできません。拳を練るものは必ず武器を練らなければなりません。
武器を練っていれば拳の動作はカバーできますので、武器さえ練っていれば徒手の護身術の身法や歩法も練ることができます。
武器操法は中国武術の核心技術です
対練
約束組手と同様と考えてもられば問題ありません。〇〇對打という二人一組で行う套路して組み入れられています。個人練習では身に付きにくい、招式のタイミング、距離感などを学びます。
怪我防止のため対練を行う際には、動作に十分に慣れた練習生同士が、初級者のレベルに立って慎重に練習を行います。
生身の人間の重み、相対する空気を学びます。
自由搏擊
スパーリングと同様の概念で考えて問題ありません。タイミング、駆け引きを学ぶには最適ですが、障害を行うこともあるため、武館によっては行わないところもあります。
寸止めのような形で距離を取って練習する場合もあれば、グローブなどの防具を用いてライトコンタクトで練習を行うこともあります。
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まとめ
今日は、一般的な北派武術の練習体系の概要を紹介しました。詳細なところは、門派、武館、教室、老師の思想により変わりますが、大きな方向性としてはこれが基本となります。
これは私が台北地区の中国武術の武館を訪問したりして実際に見た内容です。日本で中国武術を研究されている方も、これらを参考にカリキュラムを考えて頂ければと思います。本日のブログが皆さんの中国武術の練習の参考になればうれしいです。