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槍 ~兵器の王 天下九州を貫く紅槍纓と游龍の身法~

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中原の戦場では、伝統的に白兵戦の主役は槍でした。槍は騎兵、歩兵に限らず、普遍的に戦場で使用され、主兵装が銃火器に代わるまで兵装の中心として君臨し続けました。

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本日は中国の槍について解説します。

槍とは

龍

槍とは、白蠟杆に、ソケット状の槍頭を取り付けた兵器であり、一般的に馬の尻毛を赤く染めた紅槍纓が取り付けられた長兵器です。紅槍纓は、目くらましの他、敵の体から滴った血が、手元まで流れてきて手先が滑るのを防ぐという意味があります。

類似した武器に、「矛」がありますが、中国北方では直線的に突き刺す技術を用いる物を矛、螺旋を意識した勁道を使用し捻じり突く技術を用いるものを槍として区別します。矛、槍ともにソケット状の槍頭を木製の柄に取付けていますが、槍は白蠟杆を使用し、ねじり込む扎(zha)を使う北派的な技術、矛は、硬質の柄を使用し、直線的な刺(ce)を使う南派的な技術を用います。

日本民族は刀術に優れており、朝鮮民族、満州族、蒙古系民族は弓術に優れ、漢族は槍術に秀でた技術を持っています。

槍術の技術的特徴

水龍水龍

槍術の基本は 攔、拿、扎です。これらの3点以外にも、点(相手の手首などをチョンと突き切る)、崩(下から上に鋭く跳ね上げる)等のがあります。舞花槍のような、遠心力を使い、殴打する技術は棍術と共通しているものであり、槍術を始める前には、棍術の操法を修めていることが望ましいです。

槍には、大別して花槍、と大槍があり、花槍は、2m程度の長さの槍、または手を上に伸ばした指先と同程度の長さの槍のことであり、霊活、軽妙な動きが特徴です。一方、大槍は、長さ2m以上の太く重い槍を用いる技術で、重厚な風格を持ち、一撃必殺を重視する拳種で重要視されます。

槍は攻撃にも螺旋の勁道を使いますが、防御についても螺旋の勁道を用います。体の中から発した螺旋状の力を槍先に伝えることで、相手の兵器を弾き飛ばしり、直線的攻撃を絡め逸らすという技術を用います。

現代戦において、槍術の役目は100年前に終了していますが、1945年前には、村落の自衛装備として槍が配備され、華北や東北部では自衛装備の主兵装の一端を担っていました。満州馬賊、北方の鏢師の写真には、槍を装備した人物の写真があり、当時、槍が彼らの主兵装の一つであったことを知らしめています。

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槍の強み

水龍水龍

槍の強みについて以下に述べます。

射程距離が長い

槍は、長兵器であり、剣、刀しか持たない敵に対し距離で圧倒的に有利に立ちます。相手の武器が届かない距離から相手を突き刺す、打ち倒すことができます。

攻撃力が高い

全体重をかけての刺突力について、冷兵器で最強の体重投射能力があります。よって最強の攻撃力を誇ります。三字甲や明光鎧を着用した重装歩兵に対してもある程度の衝撃を与えることができます。

槍巴(柄)での殴打も可能

槍頭での刺突を主要な攻撃手段とする槍ですが、槍把での殴打も攻撃手段として使えます。槍頭での防空圏を突破してきた相手に対し、殴打を加えることができます。

練功に効果がある

武器の中では重い部類に属する槍を持って練習することは、拳術の功力の向上に有効です。具体的には勁力の向上に最適です。槍を以て拳を練ることができます。

威圧力がある

大きな武器である槍は、周囲に威圧感を与えることができます。鏢師や馬賊が槍を掲げていたのは実用品としての他、示威行為として見せつけることにより無駄な衝突を避ける意味あいがありました。

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槍の弱点

水龍水龍

槍の弱点について以下に述べます。

指への攻撃に弱い

槍は素手で柄を持ち、鍔のような防御構造を持っていません。よって、剣、刀と対峙した時に、前手の指を狙われる可能性が高いです。戦場では前腕には革性の籠手を着けていますが、指はそのままの場合があります。剣や刀の使い手は槍使いの指を狙ってきます。

防御に技術が必要

攻撃性については無比を誇る槍ですが、槍を用いて防御動作を行うには一定の技術が必要です。鋭い穂先がついている槍と言えど、柄は木製であり、堅牢な刀と対峙した際、切り落とされるか、たたき折られる可能性があります。

よって、攻撃を柄で受け止めるのではなく、歩法で距離を調整したり、螺旋の勁道で受け流しながら弾き落とすように操作する必要があり、技術的修練を必要とします。

至近距離の攻防は刀、剣に譲る

槍は長兵器であり、至近距離の取り回しについては、刀、剣に譲ります。但し、槍を素早く短く持ち帰ることである接近戦にもある程度対応可能です(長槍短用という技術です)。

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まとめ

龍の彫刻龍の彫刻

槍は今日でも冷兵器の王としての地位を確保し続けています。北派武術は、八極拳、形意拳を筆頭に、槍術の技術を土台に成立した拳術があります。槍術を練ることにより、勁道が開かれ、より効率的で合理的な攻撃動作と防御動作を実現できます。

今日でも槍術の練習は中国拳術に欠かせない要素です。

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