私は、15歳から中国武術(長拳、螳螂拳、八卦掌、形意拳等)を学習してきました。今回は、これまでの知見を踏まえ、いくつかの記事に分けながら、中国武術の概要と特徴を紹介します。
中国武術とは
中国武術は中国伝統文化に含まれ、漢字、書画、他の文化とともに、中国文化の精華の一つです。中華民族が様々な武術の影響を受けながら発達させた武術の総称です。功夫、国術、武術、武芸、技撃、と言われることもあります。
皆さんもご存じの武術では、少林拳、太極拳が代表的なものとして挙げられると思います。中国武術の歴史はとても古いと思われる方も多いかと思いますが、多くの門派(流派に相当)が100年~200年前に体系が整理されています。
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中国武術の技術的特徴
中国武術は
- 打(当身)
- 踢(足技)
- 摔(投げ)
- 拿(関節技)
がシームレスに統合された技術体系を持っており、一般的に打撃系に分類される拳種が多いものの、これらの4種の技術を包括したものとなっています。これは中国武術の大きな特徴で蹴りが投げであり、打撃が極め技でもあり、それらを組み合わせ変化させながら活用することができます。
また健康維持、気功、養生も中国武術の概念が含まれていることも大きな特徴です。武術ときくと格闘戦の技術体系であると思われるかもしれませんが、中国武術には、戦闘技術だけでなく、体と精神の調子を整える方法論まで包括されています。
中国武術には、中華民族の技撃理論、戦闘戦略が蓄積されており、中華民族に包括される宗教観念(仏教、儒教、道教、イスラム教)思想、哲学、美学が盛り込まれています。
中国武術は、それが発達した気候風土の影響を強く受けてます。例えば、中国北方で発達した武術は、黄河流域の平坦な中原を地盤としているので、のびのびとした動き、跳躍技法、複雑で巧妙な歩法を持った門派が多くみられます。
基本的な構成は同じところから派生してると思われますが100年~200年の間にさまざまに変化、変遷し、多様な風格が派生し今日に至っています。
中国南方の武術は、中国北方と異なり、船での移動が多いため、下半身をしっかり踏ん張る姿勢が多い傾向があるといわれています(一概にひとまとめには言えませんが)。北方の武術より歩幅が狭く、高い蹴りが少ない傾向がありますが、気の概念を使うことなど共通項がたくさん見られるため、北派と南派を完全に別の武術だととらえることもできません。
その他の特徴
また、中国武術の特徴としては他にも
- 徒弟制度を採用し(段位性を採用しない)
- 気の概念(気を重視するのではなく、気というあくまでも概念)の重視
- 黄土の平原に適した技術体系
という特徴があります。また現代格闘技との対決や、一対一の試し合いを想定しているものではありません。
中国武術の最大の特徴
私の考える中国武術の最大の特徴は、
- 武器の術理が身体操作の技術的根幹をなす。
ということが言えます。これは、中国武術が本質的には、武器による戦闘技術から発展したものであることを物語っています。つまり一種の身体操法で、徒手、剣、刀、槍、棍、他兵器までカバーできる運動体系です。
手というアタッチメントの先に装着するツール(つまり武器)を交換するだけですむため、練習体系を一元化でき、見方によれば、非常に効率の良い練習体系が確立できます。
中国武術のデメリットは、武器術が練習体系の根幹に組み込まれており、多くの時間を武器操法に充てるため、徒手での技撃性は、徒手を専門とする体系を持つ武道、格闘技に及びません。やることが多すぎるから、というのが言い訳の一つにもなろうかと思います。
一対一として限定し、徒手での格闘を行った場合、現代の格闘技に対して劣勢は明らかです。なぜなら中国武術の技術体系は100年ほど前に整理された後、それほど進歩していない状態だからです。かわって現代の格闘技は常に技術の研鑽と試行錯誤を繰り返し常にアップデートが繰り返されており、体力的、技術的、戦術的にとても優れたものとなっています。
もちろん多くのリソースと時間を武術の訓練と研究に充てることができる方はそれなりの成果を得ることができると思います。ですが練習内容が膨大となるため、一通りの練習内容を網羅するには相当な時間と余暇、そして興味と関心が必要です。
まとめ
先日は、中国武術概説の記事を1件目に投稿しました。今回は中国武術の概要と特徴をごく簡単に紹介させていただきました。これから少しづつ中国武術をかみ砕いた解説ブログを発表していこうと思います。
賛否両論などあるかもしれませんが、これについても、武術を嗜まれる方への、問題提起となればうれしいと考えております。本日のブログが皆様の参考になれば幸いです。