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伊勢三郎義盛百首解説 その1 天候編

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本日は忍術の心得が詰まっている「伊勢三郎義盛百首」という歌集の中にある歌について、いくつか解説をしたいと思います。今回は伊勢三郎義盛忍び歌百首の説明と、その中から足跡に関する2首について説明します。

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伊勢三郎義盛百首とは

日本の風景日本の風景

伊勢三郎義盛百首は義盛忍び歌百首ともよばれ、平安時代末期の源義経の郎党であった伊勢三郎義盛が作ったと言われる忍びの心得や忍びの極意がつまった歌集です。伊勢三郎義盛の創作とされ、伊勢三郎義盛忍び歌とされていますが、その信憑性は定かではなく、一説には江戸時代に整理されたとも言われます。

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大風や 大雨のふる 時をこそ しのびようちの たよりとはすれ

日本の雨の風景日本の雨の風景

現代語訳:風が強い時、大雨が降る時にこそが、忍び夜討ちがうまくいくものだ。

解説:大雨、大風の時には、戸がガタガタいったり、風の音がしたり、木や草がザワザワ言います。忍びが夜討ちを行う際に、多少の足音、物音を出しても砦内の者に気付かれることはありません。

また大雨の夜は、見通しが悪く、月も出ておらず暗い夜となります。屋敷は雨戸を締め切り、砦にいる寝ずの番も雨に濡れるのを嫌がり夜回りを避けます。その状態は忍び夜討ちにとって絶好の機会となります。

雨、風のない日には、屋敷の回りの土塁に生える笹や生垣、逆茂木を越えようとすれば音が鳴り、主人や下人に気付かれる安くなりますので、相当用心し、討ち入りする必要があり、夜回りも活発に動き回る事でしょう。

忍び夜討ちは、天侯の悪い日に、討ち入り先の主人や下人が疲れて寝静まり、睡眠が一番深い時期を狙って行えば大きな効果を上げることができます。雨の日は冬は最低気温が高く、夏は涼しくなるので眠りが深くなります。

但し、雨降りの日は、足跡が残りやすいため、これには用心が必要です。足跡を残さないようにするには、庭の敷石を飛んで移動したりする必要があります。現代でいえばわざとサイズの違う靴底を靴の裏に張り付けて、自分に容疑が及ばないようにしたりといった工夫が必要です。

伊賀の旦那衆は、それでも忍び夜討ちが簡単に行われないよう、居宅や砦には、土塁、堀、堀切を設け、堀切などでカバーできない部分は、往時は板塀や、逆茂木で防御陣営を張っていました。

また夜中に曲者が館に侵入しても足音がするように庭に玉砂利を敷いたり、館の周りにわざとガサガサ音が鳴る笹のような植物を植えたり、あらゆる方法で外部の侵入者を警戒をしていたと考えられます。

雪ふりに しのびに行きし 事あらば まづ足あとの 用心をせよ

日本の雪の風景日本の雪の風景

現代語訳:雪が降った時に忍びに行くことがあるなら、まずは自分の足跡を、雪道に残さないように注意せよ。

解説:雪が降った時には足跡がよく残ります。降っている最中には雪が積もって足跡が消えてしまうことがありますが、雪が溶け出すと足跡は再び現れることもあり、昨晩の深夜に何者かが侵入しようとしたことが発覚してしまいます。

風の強い雪の日は、風の音で騒音をごまかすことができ、雪を避けるため、主人や下人は外出を控えます。また暴風雪の日は見通しが悪くなるため忍び入りには絶好の機会です。雪が止んで月夜の出る静かな夜は、雪の反射で明るくなり、地味な服装でもよく目立ちます。できれば夜討ちはやめたほうがいいでしょう。

また雪が積もった時には足跡にも注意が必要ですが、雪を踏みしめる足音にも気を付ける必要があります。もしどうしても残ってしまう場合は、後ろ歩きをして歩き敵方をかく乱させたり、わざと何倍もの足跡をつけたりして、多人数が押し寄せたような錯覚を起こさせるなど、相手をかく乱することを考える必要があります。

「兵は詐をもって立つ」兵法の教えは忍術にも相通じるものがあります。

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まとめ

日本の風景日本の風景

伊勢三郎義盛忍び歌は、万川集海にも多く引用されている忍び歌です。忍術における心構えから、具体的な注意点まで様々なことを歌にして覚えやすくしてあります。伊賀の忍びは当代の最先端の技術、知恵を使うことで日の本六十余州を震撼させました。

当時の技は技術的すでに400年ほど陳腐化しており、ほとんどのものは使い物になりません。ですがいくつかの技術論、心得について、現代でも生かせる部分があります。本日紹介した2首については、現在の雨や雪という悪天候の中での夜間行動、夜間奇襲、強襲においても通用する内容なので紹介させて頂きました。

昼間に黒ずくめの服を着て、飛んだり跳ねたりすることを楽しむ方はそれでいいと思います。畳の上での体術を忍術と名乗ってくれんぼをうってる人もそれでいいと思います。

ですが、「本当の忍術を考える」という意味で、この情報発信はとても意味があると思っています。私は当代の技術として通用する心得や具体的な技術について、これからも紹介していきます。

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