本日も忍術の心得が詰まっている「伊勢三郎義盛百首」という歌集の中にある歌について、いくつか解説をしたいと思います。
今回は伊勢三郎義盛忍び歌百首の中から「道具」に関する3首について説明します。
目次
しのびには 道具さまざま 多くとも まづ食物は こしをはなすな
現代語訳:忍びには様々な道具を使うが、多いといっても、まず食物は、腰に添えて離してはいけない。
解説:忍びのように敵地に密偵に入り、長時間潜伏する必要がある場合、食料は重要です。人間は栄養が不足すると集中力が下がります。集中力が下がると不注意、ミスが増え、仕事での失敗が多くなります。携行する食品はかさばらず栄養価が高くカロリーが高いものが望ましいです。
400年ほど前の伊賀の忍術書等には、兵糧丸などという携帯食についての記載があります。もし伊賀の忍びが現代に現れた場合、間違いなく兵糧丸は手に取らないでしょう。なぜならば兵糧丸が500年ほど時代遅れだからです。
携帯食には軍事用の戦闘糧食やナッツ、チョコレートなど栄養価が高くカロリーが高く簡単に摂取できるものが便利で優れています。糖分も必要ですが、集中力を維持し、疲労感を軽減するのには、塩分の摂取は欠かせません。
糖分、塩分が適度に含まれたものを選びましょう。間違えてもイキって兵糧丸などを試すような頭の悪いことだけはやめてください。
火と水は はなさぬものぞ しのびには 野山にぬる(居る)を 役とおもひて
現代語訳:火つけ道具と飲み水は離さないものである。忍びは野山にいることが、忍びの役目と思うようにせよ。
解説:火をつける道具があれば潜伏は非常に便利になります。生ものに火を通し安全な食べ物にすることもできますし、種火にもなり、暖も取れます。
トーチ型ライターや着火剤などがあれば便利です。乾電池とスチールウールがあれば火を起こすこともできますが、トーチ型ライターは性能に優れますが、普通のガスライターのほうが単価が安く入手性が高く、携帯性もあり、耐水性も問題ない最適だと思います。
水分補給も重要な要素です。山岳地帯や塩分の濃い土壌、砂漠地帯では水分を得ることは難しいため、飲み水の確保には苦労します。飲み水は体から離さないようにしておきましょう。飲み水を現地で調達する場合、衛生的な水を選びましょう。
生水には細菌や病原菌が潜んでいる可能性もあります。ですが不衛生な水も殺菌する錠剤が販売されていますのでそれを入れて飲めば安全な水を確保できます。忍術書の記述を見ると、水は紺の手ぬぐいで越せば飲み水になる、ということが書かれている場合があります。
これで実際に飲み水になるかは、試していただかなければ何とも言えませんが、私個人としては、濁りは取れても、液体を殺菌して安全で清浄な水が確保できるかは疑問です。私なら殺菌用のタブレットを利用して飲み水を確保します。
墨筆は 万事の用に 立つぞかし しのびゆかば やたてはなすな
現代語訳:携行用の墨と筆は、全ての役立つものである。忍びを行う際身体から離してはいけない。
解説:人間の記憶力にはあります。短期記憶は発生直後には覚えていても数時間たてば記憶に残るものは30%程度まで低下すると言われています。記録に残すことはリスクもありますが、短期記憶をメモに記録することにより、正確な情報を長期にわたって保持することが可能です。
伊勢三郎義盛忍び歌百首では、墨筆と表現していますが、これは当時には筆記用具はこのようなものしかなったためです。伊賀忍者の心意気を正確に理解していれば、当代でもっとも便利なものを利用することが自然とできると思います。
現在は油性ペンや、対候性にすぐれたペン、気圧が低いところでも使用できるようにリフィルに与圧が施されたボールペンなども簡単に入手できます。また鉛筆は炭素の粉末を摩擦により対象物へこすりつけるものであり、書いた文字は水にぬれても流れず、経年劣化にもある程度耐えられるためローテクですが便利な筆記用具になります。
忍術書に、墨と筆は身から離すな、と書いてあるからと言って、ボールペンがあるにも関わらず、墨汁と毛筆でいちいち筆先を整えてからメモを取るのはやめてください。あまり小さい字も書けないし、携行性もかなり劣ります。
まとめ
本日は、伊勢三郎義盛忍び歌百首の中の携行品について解説しました。伊賀の忍びは往時には当代最新のものを使い、その技術で日の本六十余州を震撼させました。われわれはその習いに乗っ取り、最先端の技術を使うことが求められています。
携帯食、記録媒体、着火道具と飲料水を手放さないようにせよ、という忍術書の教え自体はその通りです。これらは携行性と機能性に優れたものを調達して利用しましょう。