前回まで、忍術の現代での有効性について解説を行いました。今回は、現代に必要な忍術の具体的事例と有効な道具、また不要な技術体系と道具について解説を行います。
目次
現代に必要な忍術
現代において有効である忍術といえるべき技を以下に述べます。
変装術
変装術については現代でも有効性はあまり変わっていません。但し、商人に化ける、坊さんに化けるという状況ではありません。中東の山岳地帯に潜入しても外国の密偵であることが全くわからない程度の変装術が必要です。
外国語
1945年以前は、北京語、北京語の方言、上海語、ロシア語、英語、ドイツ語、フランス語を完璧にこなせば用を足したと思われますが、現代では、第3世界の台頭が顕著であり、国際情勢がさらに複雑な状況を呈しているため、これだけでは、実務遂行に支障をきたす可能性が大きいです。外国語の方言を含めたさらなる幅広い実用レベルの外国語の習得が求められます。
IT技術
現代の情報収集では、主要任務はIT技術を使用したフィールドになるので必須の項目です。
民心獲得術
外国での現地潜入及び情報収集では、民心の獲得術は重要です。これは500年前の状況とあまり変わらないと思います。
毒薬と化学の知識
化学技術は、1945年以前よりさらに高度化しており、第2次世界大戦前の単純な化学の知識ではすでに対応は難しくなっており、現代に即した化学の知識が必要です。
光学技術及び暗視装置
500年前は、暗闇に目を慣らす、等で対応するしかなかった暗視技術も、現代では優秀な技術が採用されています。暗視装置を使用するための知識は必要です。
小火器の取り扱い
最小限の護身のための小火器の取り扱いに関する知識は必要です。但し、諜報員は戦闘員ではないため、重火器の訓練をする必要はないでしょう。
最低限の護身術
任務遂行上火器を携帯できない状況では、自分自身を守る最後の砦は自身の護身術となります。護身術は本来諜報技術には含まれないため、大きな時間を割いて、この習得に時間をかけるのは無意味です。
現代に有用な忍具
500年前の伊賀衆は当時の最新最高の技術を駆使していました。伊賀衆の考えを身をもって体現するのであれば、当代最新最高の技術を駆使しようと考えるのが普通です。
ドローン
上空からの偵察にはドローンが便利です。現代の情報戦では偵察衛星とともに重要な任務を負うことになります。
GPS
山岳地域への潜入では自分の位置を確認するための重要なツールとなります。
スマートフォン・モバイルPC
スマートフォンとモバイルPCは情報交換の為の必須の道具です。
ボルトカッター
有刺鉄線を切断する際に必要な工具となります。
ピッキングツール
錠を開けるためには必要な工具です。開錠術とセットで使用します。
現代に不要な忍術
以下では、現代の諜報活動に不要な道具を解説します。
木綿の黒装束
木綿は耐火性は優秀ですが、水分を放出する性能が低いため、現代の登山やスポーツでもあまり使用されません。
地下足袋
地下足袋や草鞋を履く意味はありません。二股に分かれた足先の隙間を使うこともないでしょう。軽量で足音がしにくい靴があれば問題ありません。
日本家屋への侵入方法
そもそも現代において、諜報活動が必要な現場に日本式の伝統家屋は存在しません。よって、
- 土蔵の破り方
- かんぬきの開け方
- 土塀の乗り越え方
- 襖を固定させる道具
- 床下への侵入術
などすべてが無意味であり、習得は時間の浪費です。
聞き筒
盗聴器を据え付ければ済みます。
手裏剣術
十字手裏剣はそもそも後世の創作であり、無足人家、郷士の土蔵から本物が発見された事は一件もありません。棒手裏剣は取り扱いが難しく、射程距離が短いため実用性はあまりありません。
日本刀の操法
日本刀を使う機会はないと思います。なんでやってるんでしょうか。目的があればいいですけど。ツバが大きい直刀を忍者刀と言うそうですが、これは、手裏剣と同じく伊賀の無足人家、郷士の土蔵から発見された例はありません。
特殊な道具は、発見された場合に無用な疑いをかけられます。本物の密偵は忍者刀は持たないはずだ、という逆転の発想で逆変装を行い、相手を油断させるという使い方ができるかもしれません。
狼煙
煙の有無だけでは伝達できる情報の種類が少なすぎ実用性がなさすぎます。そもそも電話、無線で十分に情報交換ができるため、不要です。日露戦争ではすでに有線電話が実用化されています。旅順港に停泊するロシア極東艦隊を砲撃することを目的に、観測地点を確保するため203高地を攻略した際にも、有線電話にて、その報告が参謀になされています。100年以上前のことです。
兵糧丸
現代では、栄養価に優れ保存携帯に便利な戦闘糧食が開発されています。それを使用すれば問題なく、わざわざ再現を行う必要すらありません。
畳の上の体術
現代の諜報活動が必要な現場には、畳は存在しません。よって畳ありきの受け身等完全意味を成しません。また諜報員には基本的に体術の訓練は不要なので、技術の習得に時間をかければかけるほど時間と労力の浪費になるでしょう。外国語の習得や、現地の文化習慣を学習し、現地に溶け込むことに時間をかけるほうが有効です。
まとめ
今、外国から、多くの人たちが日本で本物のNinjaやNinjutsuを学ぼうと日本を訪れています。皆さん大変結構なことです。感心します。がんばってください。