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伊勢三郎義盛百首解説 その17 用心編

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本日も忍術の心得が詰まっている「伊勢三郎義盛百首」という歌集の中にある歌について、いくつか解説をしたいと思います。

忍び歌15
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今回は伊勢三郎義盛忍び歌百首の中から「用心」に関する2首について説明します。

敵方に 馬のいななき しきりならば 夜うちの用意 するとしるべし

時計を見る男性時計を見る男性

現代語訳:敵の陣地で、馬のいななきが、しきりにするのならば、夜討ちの用意をしているとしっておくことだ。

解説:現在は、騎兵という兵種は防御力が弱く掃討されやすいという弱点から、すでに戦場の主力から外れて何百年と経過しています。ですが過去には、重装騎兵、軽装騎兵が戦場を駆けまわっていた時代がありました。

騎馬武者や鉄製の甲冑で完全武装した重装騎兵、複合弓と皮革製の防具をまとった軽装騎兵が戦場を駆け回っていた時代、馬は常に戦場におり、人間とともに行動していました。騎兵は日露戦争あたりまでは日本軍、ロシア軍のコサック部隊、馬賊として実戦に利用される兵科でした。

日露戦争の黒溝台会戦では日本の騎兵とロシアのコサック騎兵が衝突しましたし、奉天会戦においても秋山好古率いる秋山支隊が会戦において重要な役割を果たしたことは記憶に新しいです。

現在の陣地から馬のいななきが聞こえることがありませんが、その代り、現在でも敵陣地から戦闘走行車両のエンジン音や人間の足音などが聞こえることがあるかもしれません。その場合は、作戦行動を起こす準備をしている可能性が考えられます。この歌はその用心について謳ったものです。

もちろん、奇襲攻撃を準備している側は、それを隠ぺいしようとするので、そのような行動を掴むことは容易ではありません。レーダー、赤外線感応機器、偵察衛星からの情報、偵察ドローン、録音機と内通者の情報から、適切に内部の状況を掴めるようにしておきましょう。

出陣すると見せかけて撤退する(伊賀侍が比自山の戦いで実際に使用)という戦法を行うことがあり、これらについても駆け引きが行われますが、一般論として、内部が騒がしい場合、何かが起こることがあるので注意するように、という戦場での一般的な注意点についてが書かれています。

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森林(もりばやし) ねとりさわぎて 立つならば 敵のあるぞと 用心をせよ

警備をする男性警備をする男性

現代語訳:森林で寝ていた鳥が騒いで飛び立つならば、敵がいるものだと用心せよ。

解説:森林で寝ていた鳥が騒いで飛び立ったり、堀や池に浮かんでいた水どりが飛び立ったり、する場合、そこには伏兵が潜んでいる可能性があるという注意喚起を謳ったものです。

人間は脳が発達した分、視力、聴力、嗅覚、気配を察知する能力が著しく低下していますが、野生動物はそれらを鋭敏に察知します。

永久要塞に於いては、厚いコンクリート壁、トーチカ、高圧電線と有刺鉄線、サーチライトと歩哨、塹壕等等にて守りが固められていますが、自然地形を利用した野戦陣地の場合、自然の河川、森林が混在した防御陣地も考えられます。そこに遮蔽物をおきながらカムフラージュした防御陣地があるわけです。

そこを攻める場合、そこからの攻勢が考えられる場合、また侵攻先に森林があり、そこに不自然な気配がある場合、十分に用心をすることが必要です。鳥が飛び立つ場合は、伏兵が潜んでいるという記述は孫子にもみられるものです。

中国大陸の北部では、トウモロコシ畑、高粱畑等、背の高い農作物を栽培した畑自体が、反政府勢力、匪賊、馬賊たちの隠れ場所として使われました。

いずれにせよ、動物の気配は敵方の兵が移動をしていたり、伏兵を偲ばせていることを示唆するものですので十分な注意が必要です。元亀天正の頃は、人間と野生動物との関係は現代のような人間が圧倒的に国土を開発し、それを荒らす野生動物たちという構造にはなっておらず、ある種の均衡が保たれていたのかもしれません。

現代と比べると当時の人間は動物や自然、気候を敏感に感じ、判断の参考としていたのでしょう。現在は様々なセンサー類が登場しているため、哺乳類や野鳥の動向に対する警戒の重要性は劇的に減少していますが、一つの参考として、野生動物や生き物の気配、植物のざわめきから遮蔽物や森林地帯に潜む敵の動きを察知する参考になるかもしれません。

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伊勢義盛忍び歌百首のまとめ

警備をする男性警備をする男性

本日は、「伊勢三郎義盛百首」から「用心」に関する歌を抜粋し解説しました。軍事行動を起こす場合、用心にこしたことはありません。「用心」に意識しながらも「疲れ」「油断」などについても「伊勢三郎義盛百首」の提言を組み合わせ、うまく立ち回ることが必要です。

伊勢三郎義盛百首の成立時期については様々な説があります。最新最高の技術を使う伊賀の忍びにとっては参考とならなくなってしまったものも多数ありますが、油断、疲れ、用心などの人間の動きについては現代でも一見の参考の価値がある内容です。

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