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伊勢三郎義盛百首解説 その16 物見編

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本日も忍術の心得が詰まっている「伊勢三郎義盛百首」という歌集の中にある歌について、いくつか解説をしたいと思います。

忍び歌15
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今回は伊勢三郎義盛忍び歌百首の中から「物見」に関する2首について説明します。

ようちには しのびのものを 先たてて 敵の案内 しりて下知(げぢ)せよ

偵察する兵士偵察する兵士

現代語訳:要地には、忍びのものを先に発たせて、敵の動きを下のものに知らせよ。

解説:敵の要地には、密偵を先に起たせて、敵情を探り、それを味方陣営に知らせることが必要です。敵陣に強襲する何週間か前に突然物見が現れると不自然ですので、伊賀の忍びの場合、何年も前からその地に住みつき、敵陣の下人になり、妻をめとり、その地になじむということが行われていました。

何年も前から現地に住み着き、現地人と同じ言葉を操り、溶け込んでいれば、情報はスムーズに違和感なく伝わるようになっていきます。これを活用して手引きをおこなうのです。

これを桂男の術といいます。これこそが忍術の体系におけるもっとも重要な方法論の一つです。

桂男の術というのは信頼のおける人物を長期的に現地に張り付かせる技術ですが、そうではなくとも現地の人間の弱みに付け込んだり、色欲や金銭的インセンティブを活用して、現地人を情報提供者に仕立て上げることも重要です。

現地人を懐柔し情報提供者を養成することは、各国の諜報機関や特殊作戦部隊が主任務として行っていることであり、以前は陸軍中野学校でも、現地人を扇動する方法が授業内容として指導されていたとどこかの文献で見た覚えがあります。

宗教も言語も民族も異なる現地人を懐かせて情報提供をさせるためには、戦闘技術だけではない人間を操作するスキルが必要です。ですから忍びと称するものは殺傷兵器や体術にたけているだけでは全くダメで、心理学、風習、宗教、人間の行動心理学など様々な教養を備え、それらが実用性のあるレベルまで到達している必要があります。

現代において忍術を指導する方は、なぜかこのような技術を教授せず、畳の上での体術ばかりやるところもあれば、様々なことををしています。

私はこれまで伊賀の忍術と他国の忍術の流儀は異なるのでこのようなことになるのであろうと思っていましたが、伊賀忍術の心意気を教授すると銘打ったところでもこのような指導がされているところがあるのを知り、けっこう「感心」している次第です。

敵陣地を攻略する際には、まずは情報収集が必要です。塹壕、兵力、武装の種類、弾薬の種類、火砲の数量、食料の備蓄、指揮者とその経歴、兵員の士気、兵員の練度、統率力、軍曹、将官の能力、疲労度、等様々な情報を調査し、報告することの必要性がこの歌には刻まれています。

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軍(いくさ)には 窃盗(しのび)物見をつかはして敵の作法をしりてはからへ

偵察する兵士偵察する兵士

現代語訳:戦場には、忍びを物見として使わせて、敵の行いを知りて計らえ。

解説:戦場では、物見を使わせて、まずは敵陣の視察が必要です。上の歌と内容は重複しますが、敵の要塞、郭が見える高台に上り、布陣を確認する、現在であれば小型ドローンを飛ばして上空から撮影を行うこともできるでしょう。

但し、敵方はこちらの偵察行動を想定して要塞砲を隠ぺいしたり、火器をカムフラージュしていますで、実際を確認することは容易ではありません。

要塞、陣地にてすべての事を兵員が行うことは難しく、陣地には少なからず現地人が出入りします。汚物の汲みだし、食品の搬入、飲料の補充員、郵便物の運送、必需物資の搬入など、これに扮し内部に潜入するのが自然な方法です。

この方法は、軍事偵察に限らず企業情報の収集に於いても同様の効果を発揮できます。郵便物配達員や、複合機のメンテナンス営業員、出入り業者、生命保険の勧誘員、給食会社の巣スタッフ、自動販売機の補充スタッフ、電気機器の定期検査員、消防機器の検査員に変装し、企業に入り込めば機密情報を入手する可能性は高まります。

管理が厳重な企業の場合、内部の人間のアポイントがなければ入場できないという場所もあり、門前払いを食らったり、通報がされたりすることもありますので、そのような場合に備えて十分な準備をして侵入に臨んでください。

忍び物見を進入させる際に伊賀物が500年前に行っていた常套手段としては、内部でボヤを起こさせるというものです。これであわただしくなり、歩哨までが火消しに回っている混乱に付け込んで、敵陣に侵入します。もちろんボヤは伊賀者が故意に発生させたものです。

伊勢三郎義盛百首のまとめ

偵察する兵士偵察する兵士

本日は、「伊勢三郎義盛百首」から「物見」に関する歌を抜粋し解説しました。陣地攻略にを力技で行えば、多数の死傷者をだし、目的を達成できても、相応の対価を支払わなければならなくなります。

忍び物見をうまく活用すれば、作戦の成功確率が高まるだけではなく、代償を最小限に抑えることができ大戦果をおさめることができるでしょう。

忍び歌17
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