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伊勢三郎義盛百首解説 その19 陽動編

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本日も忍術の心得が詰まっている「伊勢三郎義盛百首」という歌集の中にある歌について、いくつか解説をしたいと思います。

忍び歌18
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今回は伊勢三郎義盛忍び歌百首の中から「陽動」に関する2首について説明します。

おどらかす 敵のしかたに さわぎなば しのぶ心の あらはれぞする

案山子案山子

現代語訳:敵を驚かそうとしても、敵が騒がなければ、忍びを行わおうとする心が表れてしまっている(敵に気付かれている)のである。

解説:敵を疲れさせるために陽動作戦を行う、驚かせる、等を試みても、敵が全く騒がない、反応しないのであれば、こちらのもくろみが相手に気付かれているということです。軍事作戦は、奇を持って正を制することで最小のコストとリスクで最大の戦果と効率を上げることができます。

敵方がこちらの陽動に乗ってこないのであれば、敵方がはこちらに密偵を入れて的確に状況を掴んでいるか、または優秀な指揮官、参謀が采配を振るっていることになります。この場合、注意が必要です。

戦略とは敵を欺くことです。陽動作戦を何度も仕掛け、敵を披露させたのち、陽動作戦の中に奇襲を盛り込んだり、撤退すると見せかけて攻勢に出るなど、頭脳と頭脳の戦いです。上兵は謀を伐つ、つまり、謀略により消耗せずに戦果を挙げることこそが戦上手と言えるでしょう。

陽動作戦で敵が騒がなければ、何度も陽動作戦をかけてみましょう。10回以上陽動作戦をかけ、何もないことがわかると、相手は陽動作戦はすべて偽計であると思い込むでしょう。

人間は初めは敏感に反応していた事象も、何度も同じことが発生するうちに「またか」と思うようになり、事象に慣れます。初め、狼が現れたと言った時には村人は驚いて飛んできましたが、何度も嘘をついているうちに誰も反応しなくなってしまい、本当に狼が出たときも誰も相手にしてくれなかったという逸話の通りとなります。

陽動作戦で相手の対応に慣れが生じる場合には、逆にこの習性を利用して一挙に相手に畳みかけるという計略を用いるのがいいと思います。「兵は詐をもって立つ」という言葉通り、兵法は賢い人間が勝つ、先の先まで読める人間が勝つようにできています。

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大勢の 敵のさわぎは しのびよし しづまるかたに かくれがもなし

案山子案山子

現代語訳:大勢の敵が騒いでいるのならば忍びが行いやすい。静まっているようであれば、隠れることもできない

解説:敵陣があわただしいときには、潜入、潜行なども行いやすいです。静まり返っていれば忍び働きを行うことも難しいものです。

敵が静まり返っているときはそのままでは隠れることもできません。そういう時にはこちらから相手をかき回してやればいいでしょう。例えば、木造建築物が多い場所では火事を起こしたりして、敵陣をかき回すというのが一つの方法です。時代、地方によっては、陣地には耐火性の低い材質を使うことがあります。その場合、火を使い敵を混乱させます。

現代では、陣地や要塞を構築する構造材に可燃性のものは使われません。石や耐火煉瓦、厚いコンクリートで作られた陣地、防火性を考慮した工法で作られた陣地には放火することはできません。このような場合は通気口、排気口から引火性の液体を流し込んだり、弾薬庫や燃料貯蔵庫を爆破するなどして内部をかく乱する方法が有効です。

静まりかえったところには忍び働きもありません。その場合、静まり返ったところをまずはひっくり返して騒ぎを起こしてあげましょう。混乱、人の出入りが頻繁になったところに、こそ忍び働きができる隙が生まれるのです。

陽動作戦を行い、敵方が表に出てきて、偵察を行い、その退却を利用してこれに紛れて敵兵に偽装した密偵を内部に送り込む、という方法は過去の戦場では行われてきたことです。ですから敵方も定期的に点呼をします。点呼をする際に見たことがない奴が紛れ込んでいる、人数が一人多い、ということがあるからです。

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伊勢義盛忍び歌百首のまとめ

案山子案山子

本日は、「伊勢三郎義盛百首」から「陽動」に関する歌を抜粋し解説しました。

本当の戦上手は、多大な犠牲を払って城郭を正面から攻撃したり、力技で突撃を図ったりということは行いません。内通者を囲い込んだり、見方をうまく敵方に紛れ込ませ、そこから得る情報によって効率よく弱点を攻撃したり、中からかんぬきをあけさせたり、内部で混乱を発生させ、その合図に乗じて攻撃を行ったりというということをするものです。

孫子の兵法でも、「下兵は城を攻む」として、力による直接攻撃を、知能の足りない落ちこぼれの戦法だと強調しています。

陽動作戦や高度な駆け引きにより、少ないコストとリソースで最大の効率と戦果を追求するため、それを実現するために伊賀の忍びが存在するといっても過言ではありません。現在は日本国内の田舎砦を攻略することはありません。その代わり、多種多様な民族、人種、宗教が混在する地域では今でもこのような小競り合いが起こります。

そのような地域での小規模戦闘や敵地攻略では、伊賀の忍びの技はまだ使い道があるのではないかと想像する今日この頃です。

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