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伊勢三郎義盛百首解説 その21 持場編

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本日も忍術の心得が詰まっている「伊勢三郎義盛百首」という歌集の中にある歌について、いくつか解説をしたいと思います。

忍び歌20
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今回は伊勢三郎義盛忍び歌百首の中から「持場」に関する1首について説明します。

さわがしき 事ありとても 番所をば 立ちのかざりし 物とこそ聞け

衛兵衛兵

現代語訳:騒がしいことがあっても、番所である持ち場を立ち退いたりしないことを、心に留めよ。

解説:陣地で騒がしいことがあっても、予め指示された持場を離れないことが警備業務という業務委託を受けた者の鉄則です。

騒がしいことがあるということは、敵方からの陽動を受けている可能性が高く、敵方は歩哨、警備員を持場から離れさせようとしている計略の可能性が高いです。よってみだりに持場を離れることは敵方の計略にまんまとはまることになり非常にリスクの高い行為となります。

作戦行動というものは、際限なしのコスト、労力、兵力を投入すれば成功します。ですが、これを成功させるのに、膨大なコストと甚大な損害を被りながら達成するのと、少ない労力と費用と最小限の兵力で達成するのでは、成果が全く異なります。

方面軍総動員で敵方とにらみ合い、会戦、戦役を持ってこれを撃滅する、要塞に正面突破を図る等では、たとえ勝ち、戦果を得たとしても、消耗してしまいます。

プロイセンの将軍、カール・フォン・ クラウゼヴィッツによる著作「戦争論」においても、戦争とは政治の手段にほかならないという類の事が記載されています。戦において、戦果、作戦成功の効率性を追求するには、情報収集、分析、作戦立案、指揮統率の質の向上が必須です。分析のための情報収集に当たり、忍びを採用するかしないかでは、作戦の効率性には雲泥の差が出ます。

話は少しずれてしまいましたが、警備、歩哨を行う人員は、陽動を行う技術と経験のある物がふさわしいです。なぜならばそれらの人間が警備を行えば、自分の経験によって敵方の作戦行動を予見することができるからです。相手が見方をかく乱させ、騒がしくしようとしている目的を予知できれば、それに対する対応策が打てることになります。

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歩哨、警備を一人で行っているとき、何か不審なことが起こっても持ち場を離れることができないとなれば、不審な事象の報告を行うことができません。よって歩哨が持ち場を離れずに連絡、報告を行える方法を確保しておくことは重要です。

昔は笛や合図、遠方への連絡へは狼煙や伝書鳩が使われたりしましたが、優先式の電送方式による通信は現在も有効です。第一次世界大戦までは遠方への連絡はもっぱら優先式で行われていましたが、第二次世界大戦では無線での通信が主流となりました。

優先式での連絡を傍受するには、通信回路に連絡線を接続することで行うことができます。無線では敵方が使っている周波帯を確認しそれにチャンネルを合わせれば情報自体を傍受することは可能ですが、一般的には暗号を施してあるため、暗号を解読しなければ内容を把握することはできません。

歩哨を立てる際には、連絡手段、通信手段を講じるか、伝令役を常時巡回させるなどの対策を取っておくことが必要です。

伊勢三郎義盛忍び歌百首のまとめ

衛兵衛兵

本日は、「伊勢三郎義盛百首」から「持場」に関する歌を抜粋し解説しました。見方の陣地に騒がしいことが起こっても、みだりに持場を離れず、指示された持場を守ることが最優先です。

こちらの忍びが敵陣をかき回し、浮き足立たせることを得意とするならば、相手方もその手を使ってこちらをかく乱しようとしてくることが予想できます。後方攪乱により指揮系統の意思決定をかき乱すことは、作戦遂行の成功確率を高めることにもつながります。

作戦遂行は、予算、労力、兵力、兵站などあらゆる資源を無尽蔵に使うことができれば必ず成功します。ですが実際には兵員補充能力、兵器生産能力などは人口、経済規模、工業力、資源、輸送力、社会インフラ、教育水準と練度、士気と目的など多くの制約を受けます。多くの制約を受ける中で最高の効率で組織を運用し、最小の投下リソースで最大の効果を上げることが戦略上重要になります。

そのためには、間諜、つまり忍びをどのようにうまく使うかが勝負の分かれ道になります。「間」という情報を収集するための専門人員を配置することの重要性を世界ではじめて体系的に整理したのは「孫子」です。

孫子の兵法にのっとり、情報収集人員を配置すれば、戦争、紛争で投下戦力に対して大きな成果を上げることができる、または敵の攻撃において、被害を最小限にとどめることができると確信します。

元亀天正のころにおいても、情報収集の重要性に着目した戦国大名や土豪は、最新最高の諜報技術を持つ伊賀衆の能力に着目し、情報収集、警備、後方かく乱、陣地攻略に活用して成功しました。

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