皆さんは、忍者、忍びと聞いてどのようなイメージを想像しますか。黒ずくめの服?直刀を背負っている?頭巾をかぶっている?当時の夜襲においてはこのような出で立ちで仕事をする忍びもいたかもしれません。
応仁の乱から群雄割拠の戦国の世、日之本六十余州において伊賀、甲賀が諸侯から引手あまたってあった理由は、当時考えうる最新最高の技術を利用していたからであると考えられます。
忍びという業務を稼業として競争力を維持するには最新最高の技術を使うことが必要です。本日は当代の忍びが活躍するにおいて必要な技術体系などについて解説します。
忍術の技術体系
忍術の技術体系には以下のようなものがあります。
諜報活動
諜報活動とは情報収集に関する活動です。主に情報機関によって行われ、軍事、政治、経済等に関する情報を収集し分析する行為です。場合により非合法的な手段または社会通念上許容されない方法を使い情報を収集することも行われます。
そもそも諜報活動とは、「はかりごと」にかかわる情報を取り扱う活動です。情報収集、情報の分析、情報の攪乱や偽情報の拡散、防諜も諜報活動に含まれる場合があります。
諜報活動は外来語ではインテリジェンスとも言われます。戦前の日本陸軍参謀本部ではこれを秘密戦として謀略工作を行っていましたが、ソ連やアメリカとの情報戦では日本は常に劣勢に立たされていました。日本帝国は諜報技術を少しでも向上するために陸軍中野学校を創設したりと努力を行いましたが最後まで情報戦における劣勢を挽回することはできませんでした。
諜報活動の基本は、敵に近づくことです。これは伊勢三郎義盛忍び歌でも書かれているとおり情報収集と情報攪乱を行う際に非常に重要な方法論です。諜報には、防諜や相手方の諜報エージェントを逆に利用することも含まれます。また諜報においては最新の技術が求められます。
例えば以下のような技術と知識が必要です。
- 爆薬と延焼
- 化学の知識
- 情報通信技術
- 毒物と薬学
- 方言と外国語
- 服装
- 道具
- 職業
- 世情
- 護身術
情報収集について
上では諜報、つまり忍術に必要な技術と知識を列挙しましたが、忍術で最も重要な技術は情報収集技術です。情報は以下の要は方法で収集します。
公開情報
新聞、雑誌、テレビ、インターネット等メディアでの情報、書籍、刊行物等の公開情報を得る方法です。一般的に情報収集を行う諜報活動のほとんどはまずは公開情報を収集し整理することから始まります。
人間と噂話
公開情報ではなく、人間の間で話題になっている噂話や世間話から情報を入手する方法です。現代では各国の大使館、領事館などには情報機関からの出向者が駐在し、巷にあふれる人づての情報を収集している場合が多いようです。
大使館や領事館の勤務者という立場は、情報収集任務を行う者としてマークされることが多いことから、民間の商社やビジネスマンの身分を装い情報を収集する密名を受けて活動する場合もあります。
伊賀の忍術書には、「七方出」という変装術が書かれていますますが、宗教家、ビジネスマン等の職業は合法的にビザが発給され合法的に様々なところで活動できる便利な姿です。
画像や動画
偵察衛星や無人偵察機により撮影、または録画された記録を分析することで情報を得る方法です。500年前はカメラがビデオが普及していなかったため陣地の構造を把握する際にも工事関係者に成りすましたり見物人に紛れこんで地図を書き取るという方法が取られていたはずです。
電波と通信の傍受
通信や電子信号を傍受することで情報を収集する方法です。電話や無線、インターネット回線で伝送される通信を傍受し、暗号を解読し情報を探ります。秘密情報は暗号化されていることが多いため、それを解読、解析する技術が重要となります。
第二次世界大戦までは物理的な方法で暗号が設定されていましたは現代では複雑なデジタル的手法により機密処理が施されるため、これに関わる技術は日々高度化しています。
科学
赤外線、放射線、空気中の物質の変化から情報を分析する手法です。空気中や地殻に含まれる放射線量の変化から核実験や核開発、核兵器についての情報を分析するという風に、主に軍事的な情報収集に用いられる手法です。
まとめ
本日は「500年遅れるな」というテーマで忍び、忍術の技術について解説しました。読者の方の中には、このような概念は忍びではないと思われる方もいるでしょう。伊賀以外の諜報術の考えについては私もわかりません。
ですが、伊賀甲賀地区の忍びの感性で言えば、その時代に置いて最新最高の技術を使う事こそが諜報戦において技術的参入障壁を維持するために必要なことです。これは現代でも同じだと思います。
現代で「忍者」「忍び」を称されている方の中には、木綿素材の服をきて、刀を背負い、手裏剣術や体術をお披露目している方もいるでしょう。狼煙の実験、兵糧丸という鯉の生血を練り込んだただの団子、本来情報収集を行うために多くを通信技術の習得に当てるべき時間をなぜか体術の訓練に当てる忍者教室。いろいろあります。
忍者が使う道具として紹介されている者の多くが、竹づつや鉄、柿渋、木綿の手ぬぐい、黒色火薬、天然素材由来の毒薬等多くは500年前の道具と技術です。
当時の伊賀の忍びはおそらくそのような道具や技術を発明し、工夫しながら使ったことでしょう。なぜならそれが当時の最新最高の技術であったからです。ですが当時の伊賀の忍びはそれより500年さかのぼる源平合戦当時の技術を復刻し弄んでいた人はいないと思います。そんなことしたらそこらじゅうの在所の人に「感心」されてしまいます。使い物になりません。
忍びを見世物として楽しみ、それをロマンとしてとらえるのは面白いことですし、ここからは想像ですが、よその忍びは昔のことを使って仕事をしてたんでしょうね。当時。だからそれを真似してもらうのはいいと思います。
但し、伊賀の忍びの心意気としては、やはり最先端の情報収集技術や素材、理論、科学を活用して仕事をする、ということが普遍的な価値観となります。
「本物の忍者とは」を考え、どのようなことをするべきか、ということをもういちど思い返していただければと思います。