忍びは、過去様々な方法で、情報伝達を行ってきました。
- 忍び文字
- 狼煙
- 隠語
等が文献に見られます。元亀天正の頃はこのような情報伝達方法が当時としては最高の高率で情報を素早く伝達する方法であったのでしょう。今回は忍びの情報伝達方法について解説します。
人類が使用していた原始的な情報伝達手段
人類が使用した原始的な情報伝達手段としては、狼煙、発光信号、手旗 気流信号、伝声管、人間による伝令、伝書鳩、モールス信号等が挙げられます。ですが、電信技術、情報技術が発達した現在において、これらの利用価値は限定的です。
伊賀の忍びの技術論
伊賀の忍びは、当代で最新最高の技術を使うことで全国を席巻しました。特に城取り、夜襲、放火等の技術を買われ、畿内の陣地攻略に活躍した忍びもいたことでしょう。
伊賀の忍術の特性を考えるならば、情報伝達手段においても伊賀の忍びの場合は、その時の環境、技術に於いて最高のものを選別し活用することにより技術的優位性を見出しています。仮に現代に伊賀の忍びがいる場合、情報通信手段には狼煙は絶対に使うことは無いでしょう。
通信技術の歴史
第1次世界大戦においては、無線通信技術が発展途上であったため、通信は主に有線通信で行われており外国との通信に於いても海底ケーブルにて通信が行われていました。
第2次世界大戦時には、無線とレーダーの技術が発達したことにより、通信は無線にて行われることが多くなりましたが、無線は傍受される可能性があったり、電波の状態が不安点という要因があるため、信頼性の高い有線通信も並行して利用されました。
また第2次世界大戦時は、通信内容を傍受される事を防ぐため暗号の技術が発達し、解読を防ぐため、アルファベットや数字の羅列を文章に変換する変換器なども発明され利用されました。またこれに伴って、暗号解読の技術も著しく発達しました。
第2次世界大戦時、アメリカは日本側の暗号解読に成功し、日本軍の軍事作戦の全容を予め把握することに成功しています。
近代には、モールス信号により言語の連絡を行っていましたが、現代においては通信技術の発達により、携帯情報端末でも直接膨大な量のデータの送信が可能となっており、廉価な民生用通信機器においても情報伝達に十分な機能を発揮するものが普及しています。
だが、それらは開かれた規格の無線通信となるため、傍受と解読をさせる恐れがあり、諜報への利用については賛否が分かれるところです。
2022年2月末から始まったロシア軍によるウクライナ侵攻ではロシア軍は民生用の無線機やスマートフォンを使って暗号なしで情報伝達を行い、それをウクライナ側に傍受されたことがきっかけで軍の司令官の所在場所を把握されてしまい、相当数の高級司令官が戦死するという失態を引き起こしています。
このように暗号を介しない通信手段での通信は敵対勢力に傍受される可能性が高いです。ただしこれを逆に活用すれば偽の情報を流して相手を翻弄する活用方法もあるということです。
特殊な暗号通信を使い、その電波をキャッチされてしまうと、それには重要な機密情報が含まれていると認識され警戒心を抱かれる場合もあります。そのようなことも考慮すると、民生用の周波帯を利用したスマートフォンやSNSでの通信を行い、そこにあらかじめ決めた合言葉で連絡しあうというほうが逆に相手に情報を解読されない可能性があるとも言えます。
このあたりになれば相当な頭脳戦になります。情報将校はこれらの暗号解読と偽情報の流布などを管理し、戦局を有利に導き、敵方を翻弄する必要があります。
現代においては、膨大な量の一般通信がおこなわれるため、通常の通信周波領域を利用して、重要方法をやり取りすることが自然な方法と取られるかもしれません。
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忍びと通信技術のまとめ
今回は忍びと情報伝達について解説しました。
現代の情報伝達と通信情報の傍受、妨害については、複雑で専門的な技術を要しますが、忍びは情報収集と防諜を担当する専門職である以上、これに精通することが必要です。
忍びの情報収集と情報伝達手段として、過去に使用されたであろう情報伝達、情報収集の道具として「聞き筒」や「狼煙」を紹介するのは大変結構ですが、それを再現したりしてもてあそぶというのは元亀天正の忍びを愚弄する行為にほかなりません。
昨今の忍者教室では、後世に創作された十字型の形状をした手裏剣の投げ方や、屋内の畳の上というごく限られた特殊な空間を想定した体術等がもてはやされているようです。忍びの技の本質は情報収集の技術体系であるということを再考し、情報処理技術、通信技術、ハッキング、妨害、防諜、通信の傍受、暗号化されたファイルの解凍と分析、データの破壊、改竄とその証拠の隠滅方法などを主眼とした内容が指導されてしかるべきと考えます。