本日は嵩山少林寺とその周辺地域で伝承される少林拳について解説します。
少林拳とは
少林拳は、嵩山少林寺近郊の登封県周辺に伝承される拳術の総称です。嵩山は、中国の五岳(泰山、衡山、華山、恒山、嵩山)の中岳にあたります。少林寺は、嵩山の少室山の麓の林に所在することから名付けられたと伝えられます。
日本では少林拳と少林寺拳法が混同されますが両者には直接の関係はありません。
中国南部の福建省に南少林寺という寺が存在したとされ、南派の武術は南少林を自称する門派があります。南少林寺の実在については今後の研究が待たれます。
ここでは、広義の長拳としての少林拳ではなく、河南省登封県周辺に伝承される拳術であるについて少林拳を取り扱います。長拳については以下の記事を参照ください。
少林拳の歴史
伝説上の創始者は、禅宗の開祖の達磨大師とされています。
少林寺は495年に、少室山の別峰五乳峰の麓に建立され、以後1500年余りにわたり、盛衰を繰り返しつつ存続しています。唐初の621年には、13人の少林武僧が李世民(唐の2代皇帝 太宗)を助けたとの記録があります。少林寺は棍法で有名であり、「諸芸は棍を宗とし、棍は少林を宗とす」と武備志と謳われています。
少林寺は1928年に、大火があり、多くの伽藍が失われました。また文化大革命でも多くの文物が失われましたが、少林拳は寺院内のみならず、登封県の民間にも流布していたため失伝を逃れています。
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少林拳の特徴
少林拳は、長拳に属する拳種の中では、比較的動作がコンパクトな部類に属します。長拳のカテゴリーの中では短打の傾向が強い拳種です。また仏教寺院と密接な関係があるため、「禪武合一」の思想を持っています。これは、道教思想や易経を術理に取り入れている形意拳や八卦掌、回教徒由来の武術である心意六合拳や査拳とは異なる特徴です。
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少林拳の強み
少林拳が伝統的に「剛」を重んじる武術です。そのことは門派の最大の特徴とされる「拳打一條線」によく表れています。つまり、敵に対して最短距離を通って直線的な攻撃を得意とします。円と柔の動きを練る太極拳とは対照的です。
最短距離を直線的に攻撃しますので、最高の速度と効率で攻撃が届きます。また長拳の中では、動きがコンパクトであり、短距離の攻防に優位性があります。至近距離では、心意把と呼ばれる強烈な靠法が有名です。
少林拳の弱点
長拳に分類される拳種の中では、動作がコンパクトで、短打に分類されます。よって攻撃の射程距離では、同じく長拳系の拳種である査拳や華拳に及ばないところがあります。また、拳打一條線と言われるように、攻撃線が直線的であるため、相手の正面に強い防御壁が存在する場合、攻撃が困難になります。
まとめ
少林寺は世界的に非常に有名であり、「天地の中央にある登封の史跡群」としてユネスコの世界遺産として登録されています。北派の長拳類の武術を北派少林拳と名乗ることも一般的に行われ、本来の少林拳とは異なる概念が流布しているのが現状です。
また、少林寺一帯には、武術学校が林立し、国家が推奨する新しい形式の武術を指導する学校も多く存在します。民間に伝承される本来の少林拳の姿を目にする機会はなかなかなく稀少な武術です。
日本では「日本少林拳同盟会」の川口賢先生が登封県の少林拳の普及に努めています。
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今回は、少林拳は河南省登封県一体に伝承される狭義の少林拳を紹介しました。